一億二千万の妄想 | 二枚舌の狼が800匹

一億二千万の妄想

色々な事があり、もう何もかも嫌になったので
このパターンはやめようと思いましたが、
手持ちの武器を捨てると言うのは意外と冒険であり
チキン野郎の僕にそんなマネは出来ません。

以下本文。

僕の部屋にあるテレビはすごく目に優しいテレビであり、
音声が出るのみで映像が映りません。
正確にはほんのわずか、
縦2ミリ、横に30センチくらいの形で映っており、
その狭い狭い世界でタレントや役者、お笑い芸人が
色々な事を繰り広げています。
簡単に言うと壊れています。

暇でしょうがない時は
この巨大なラジオをつけてみたりするのですが、

「今日のゲストはこの人です」
「おおおおおおおお」

 誰ですか?

「はい、コインが消えました」
「おおおおおおおお」
 
 すごいんですか?

「わぁ美味しそうなラーメンですね」

 そうですか。


取り残されている気分が甚だしく、
僕はこの宇宙でひとりぼっちなのだと考えながら
テレビを消します。

迫害を受けた気分で恨みがつのり、
いっその事、テレビになってやろうと考えました。
テレビになるのは簡単で、
和服でギターを持ち、ガラスの向こうで残念と叫べばいいんです。
テレビで我々が見るのは我々自身の妄想であり、
そこに映る妄想は大多数の悪夢と喜劇。
さあみんなに本当のテレビを見せてやる。
僕はショウビズのスターでありガンダムのパイロット、
皆の妄想を満たすべく、
泣いたり笑ったりしてやろうじゃないかと
ブラウン管を叩き割り
足をつっこみ
体を入れる
中に入ってみたものの
テレビの中は
意外と暗く
華やかな画面とは大違いだ。