催眠 | 二枚舌の狼が800匹

催眠

Q.色々な事がありましたか?
A.ありました。もう何もかも嫌になりました。


学校に行くと、前からN君が歩いてきました。
手を上げて挨拶をしたのですが、
反応が何も無い。
とうとう無視されるようになったかと
陰鬱な気分になりましたが、
詳しく話を聞くと
諸事情でコンタクトをしないで学校に来たそうです。
コンタクトをしていないと
見ている対象が何なのかわからないそうです。

そうかそうかなるほどそうなのか、と思った僕は
とりあえず中指を立て、彼に『FUCK』を突きつけてみました。
しばらく彼は目をぱちぱちしていましたが、
爽やかな笑顔になり、
親指を立てて『GOOD』を返してくれました。
コミュニケーションが取れて、とても嬉しい気分です。

もう一度『FUCK』を突きつけてみると
彼は笑顔で中指と人差し指を立て
『PIECE』をしてくれました。
世界の平和はこのようなコミュニケーションが第一歩です。

前から●●●君が歩いてきた気がしたので
「あ、●●●だ」とつぶやいてみました。
彼は笑顔で振り返り、知らない人に挨拶をしました。
友達作りは元気な挨拶から始まります。
その人は怪訝な顔で去っていきました。

購買へ連れて行ってくれと言うので、
とりあえずエレベーターで一階に降りる事にしました。
「ここは階段だよ」と言ってみると
彼は笑顔で足踏みを始めました。

「これは飲み物の自販機だよ」
彼は笑顔で証明写真機にお金を入れました。

「ここはトイレだよ」
彼は笑顔で女子トイレに入って行きました。
中から悲鳴が聞こえます。

「あなたはとても格好良い」
彼は笑顔でポーズをきめました。

「あなたは神だ」
彼は万能感で笑顔になりました。

「ここは君の家だよ」
彼はあわて始め、
笑顔で本やビデオを片付ける動作を始めました。
出しっぱなしにしているようです。

「ここは北の楽園だよ」
彼は少し不安な顔を見せましたが
すぐ笑顔になり、将軍様を賛美し始めました。

「ここは南の島だよ」
彼は笑顔で泳ぐ動作を始めました。

「とても暑いよ」
彼は笑顔で気温36度に感じました。

「みんな服を着ていないよ」
彼は笑顔で服を脱ぎ始めました。
道行く女性が悲鳴をあげて興奮しています。
彼も興奮しています。

「輝く未来はあっちだ」
背中を押すと、
彼は全裸でバンザイの体勢になり、
笑顔で雑踏の中央広場へと走り始めました。